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tamavskyのB面

8月上旬日記:ケチャまつり、ファスビンダー、動物の知性、神話

何かが少しずつ繋がっている8月上旬。

 

8月5日、芸能山城組の「ケチャまつり」に行ってきた。
ジェゴグで交響組曲AKIRAからの演奏があり、鹿踊り、ジョージア伝統合唱、ブルガリア民族合唱、ガムランまで観ることができた(夜にスタジオ練習があったので、ケチャまでは見られなかった)。
本当に行ってよかった。あまりにも素晴らしくて興奮状態が解けず、数日間そのことしか考えられなかった。あれがハイパーソニックサウンドの効果なのだろうか。よく晴れた午後、暑い屋外でずっと演奏を聴いているのに少しも嫌な気持ちがしなかった。
ジョージア伝統合唱とブルガリアの民族合唱で思い出したのが、小学生のときに入っていた吹奏楽部で演奏した「ルーマニア民族舞曲」がとても好きだったこと。バルトークの曲は今でもよく聴く。パラジャーノフの映画もあの音楽が大好きだ。東欧の民俗音楽にどうしてこうも惹かれるのか自分でもよくわからない。
とにかく、芸能山城組の演奏には強く感銘を受けたので、また機会があればぜひ演奏を見に行きたいと思う。

 

8月6日、Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下にてライナー・ヴェルダー・ファスビンダー傑作選の3本を観た。
『不安は魂を食い尽くす』、画面の決まり具合がひたすらに格好良い。風格がある。人間の意地悪な視線、居心地の悪さが凄まじいが、だんだんと意味がわかってくる。差別や偏見、マイクロアグレッションの描写は現代でも全く古びない。後ろ指をさされ、世界に二人だけならいいのにと願うエミもアリも全くの善人ではないところもよい。人間は皆不完全であるから面白い。「お互いもっと優しくならなきゃ」、というエミの台詞で仲直り、ハッピーエンドのようにも見えるが、きっとまた同じようにお互いを傷つけるのだろうことは想像に難くない。それから、鑑賞後にWikipediaを見ていてアリを演じた俳優のその後を知ってしまい、なんともいえない気持ちになった。
あとそういえばなんかエンパイア・オブ・ライトってこんな感じの設定だったなと思った。

マリア・ブラウンの結婚』は本当に面白くて、オールタイムベストムービーに入るくらい好きな映画になった。爆発で始まり爆発で終わるマリアの結婚。マリアは自立心があり、いつでも自信満々で、聡明で理知的で、型破りな美学があって、見惚れるほど美しい女性主人公で、これってまさしくBad Bitchじゃないか。太宰治『斜陽』のかず子くらいの衝撃があった。

『天使の影』(これはダニエル・シュミット監督)は出てくる人が皆うっすら死にたいような顔をして詩のような台詞を吐き続ける。主人公が最初の方でずっと寒がっていて、画面もなんだか寒々しかった。あと序盤で子猫がひどい目にあうので注意。ファスビンダー演じるヒモ男が見事なクズで、早く死ぬか捕まるかすればいいのにと思っていたのに、ラストシーンの彼があんなに悲しいなんて。

 

帰りに渋谷TSUTAYAで鈴木俊貴・山極寿一『動物たちは何をしゃべっているのか?』を買って帰った。鈴木先生が研究しているシジュウカラの"言語"のこと、山極先生が研究しているゴリラの認知能力のこと、どれにも新鮮な驚きがある。他の生き物についてのエピソードもたくさん盛り込まれている。まだ読んでいる途中なのだが、人間以外の生き物のコミュニケーションや認知についてのエピソードから、人間はどのように言語を発達させるに至ったのか?という大きな問いに向かっていっていて、胸が熱くなる。

人間と動物を分ける意味って本当にないんじゃないか。ケチャまつりで観た、岩手県に伝わる「鹿踊り」は鹿の群れが山から降りてきて、ここは人がいなくて安全だとリーダーが判断してみんなで遊び、そのうち帰っていくというような(うろ覚えなので少し違うかもしれない)ストーリーがあって、動物たちがもっと身近に暮らしており、人は動物を観察して、動物も人を観察して一緒に生きていた時代のことを思った。

 

8月7日、バンドメンバーで久しぶりに飲みに行った。小出がエゾリスを店名に冠した喫茶店を見つけて、エゾリスについて知りたくなり、本を借りて調べたらしくエゾリス博士になっていた。なんと、エゾリスもわざと「天敵が来た!」と鳴いて自分だけ食べ物にありつくような騙し行動をするらしい。意気揚々とそれ、シジュウカラもやるんだって!!とプレゼンしてしまった。リスだってサルだってシジュウカラだって結構ちょっとしたズルをして生きているのだ。
人間だってもうちょっとズルをして生きればいいと思う。

 

高校同期4〜5人で毎年旅行に行っているのだが、今年は阿蘇と高千穂に行くことになった。毎年順番に企画担当を回しており、今年は私が担当になったので、公共交通機関だけで楽しむプランを血眼になって立てている。阿蘇はまだ良いのだが高千穂が思っていた数倍は秘境で、バスが1日2本というレベルだった。
11月後半の山の中でバスに乗れなければ即終了というとんでもないスリリングな旅になりそうだ。

天安河原天岩戸神社へも行くので、せっかくなら古事記について勉強して行きたいと思っている。そういえば鹿踊りも、一説では神の使いである鹿に扮して踊りを奉納したという由来があるらしい。三連休は図書館に行きたい。お盆だが開いているだろうか。