my lips are sealed

tamavskyのB面

いけいけいきとしゴーゴー

月曜の夜は感情が昂りすぎて動くのが怖くなっていた。帰宅したAちゃんと少し話すも落ち着かず、じっとしていた。顔を布団で覆ったり電気を消してカーテンを閉めて真っ暗にしてとにかく視覚情報をシャットアウト、ベッドから降りてうずくまっていたらAちゃんが心配して背中をさすってくれた。うまく説明できないでいたら、向こうも下手に話をしないほうがいいと思ったのか無言で肩のマッサージが始まって、ちょっと面白かった。それに肩に力が入っているのにも気づいた。淡々と歯磨き、トイレ、着替えを済ませてひとまずベッドに入ったがなかなか寝付けなかった。

 

火曜日は在宅勤務。午前中に祖母からしらすと鰻が届く。この前も同じものを送ってもらったが、クール便にし忘れてしらす干しと釜揚げが腐ってしまったので、同じものを冷蔵で送り直してくれた。また鰻が食べられるのは嬉しい。祖母はこの日78歳になったらしい。ワクチンの予約もできたよと教えてくれた。

退勤後には友人からポチタのぬいぐるみが届いた。欲しい欲しいとTwitterでつぶやいていたら、ゲーセンで遊んでたら取れたから送るよと言ってくれたのだ。嬉しくて、漫画と同じポーズで写真撮影。原寸大ですごくかわいい。

在宅勤務をいいことに昼休み以降断続的に前日作ったスープを飲み続けていたら、晩ご飯を食べる気がなくなってしまった。燻製のオリーブと枝豆だけ食べた。特にオリーブが美味い。噛むとじわっと出てくる油にもしっかりとスモーキーな香りがついている。

この日も午後から感情の昂りが続いていて辛いので、深呼吸をしながらベッドに横になっていたらいつの間にか眠っていた。

 

水曜日。11時20分から歯医者なのに、風呂に入っていない状態で10時半に目覚める。大急ぎでシャワーを浴びて髪を乾かして歯を磨いて、ノーメイクのまま家を出る。

歯医者は久しぶりだ。少し前から前歯が茶色くなっているのに気づいた。最近はマスク生活とはいえ、食事中や写真を撮るためにマスクを外したときに笑うのが嫌になっていて悲しいので、ついに予約をしたのだった。虫歯だと思っていたのだが、着色汚れだった。クリーニングをしたら真っ白になって、明るい気持ちになった。会社員時代に5万も払って半年間、ホワイトニングをしていた。そのせいで汚れが付きやすくなっていたのだろうか? タバコの量も最近増えていたし、そのせいかもしれない。ステイン対策をしっかりしようと思った。

ただ、前歯以外も見てもらったところ奥に3本虫歯とそのなりかけがあるらしく、あと2回の通院で治していくことに。親知らずを抜こうという話にはならなかったが、右下はちょっと生え方が悪く、横向きになっているらしい。

私は歯医者も採血も予防接種も昔から平気の平左で、大の大人が怖がっているのを見ると面白くなってしまう。痛みに強いのかもしれないが、その私が動けなくなるほどの偏頭痛や生理痛ってどれだけ……と恐ろしい気持ちになる。偏頭痛はさておき、生理痛が重すぎるのはこわい病気の可能性もあるので、婦人科にも行った方がいいだろうなあと思いつつ行っていない。

歯医者が終わって一度家に帰り化粧と着替えをして、渋谷に出かける。

昨日、バンドのギターから中村佳穂さんのライブチケットを譲ってもらったのだ。2枚あるのでAちゃんと行こうと思ったが仕事の終わり時間が間に合わなさそうということで、バンドのドラムと一緒に行くことになった。

せっかく渋谷に行くなら、と思い早めに家を出て、マークシティにできたダイソーの300円以上ショップ、Standard Productsへ行ってみた。素材感はチープだがデザインはそんなに悪くない。無印っぽい商品が格安で買える。デフレを感じる。欲しいと思う商品がいずれも大きいものだったので、今日は買い物はしないことにした。

時間に余裕があったのでSHIBUYA PUBLISHING BOOK SELLERSへ。植本一子さんの最新作『個人的な三ヶ月 にぎやかな季節』を買いに行った。閉館したアップリンク渋谷を通り過ぎ、ずっと歩いて行ったところにある。本も雑貨も品揃えがよく、"奥渋"エリアの閑静でお洒落な雰囲気に合っていて良かった。ついでに上間陽子『海をあげる』も購入。なぜか上間さんの名前に見覚えがあり、立ち読みをしてみたら面白そうだったので買った。沖縄出身で沖縄のことも書いているそうだから、岸政彦さんつながりの何かで見たのだろうか……と思ったが、『個人的な三ヶ月 〜』を読んでいたら植本さんが買ったことを書いていた。もしかして?と思い、登録しているニュースレターを遡ると、やっと読んで、泣きそうになったと書いてあった。こっちだった。上間さんのお名前、うっすらとでも覚えていてよかった。読むのが楽しみだ。

ライブ会場の近くの店で本を読んで過ごそうとマップを開いてカフェを探すと、ザリガニカフェというのがヒットしたので行ってみた。隠れ家的なお洒落なカフェで、若い女性がたくさんいた。この子たちは大学生だろうか、渋谷だし青山学院大学の子だろうか、話すスピードの速さと夏らしい色鮮やかな服がより一層若々しさを感じさせるなあ、などと考える。私は26歳になってようやくこの子たちと同じ空間で気後れしないようになれた……と、思う。必要以上に老獪?な心持ち。老獪という言葉が初めて自分から出てきて、使い方が少しヘンかもしれない。

アップルパイが有名なお店らしいのでせっかくならとアップルパイを頼むと、すごいのが来た。

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しっかりとした甘さと香ばしさに集中する。甘いものは無言で、しっかりと味に向き合って食べるのがやはり、良い。目も閉じて、味蕾と鼻の奥に意識を集めて、全力で味と香りの全てを享受する。

Aちゃんはよく食事中にスマホを見る。最初は別に外じゃないしいいか、と思っていたがだんだんとそれが気に入らなくなってきている自分がいる。特に私が手間暇かけて作ったご飯のときは、向き合うに値しないと思われているようで悲しい。機嫌のよさそうなときに言おう。

 

 

ドラム(Kちゃんとする)が渋谷についたというので店を出てLINE CUBE SHIBUYAへ。渋谷公会堂だった場所だ。いつのまにこれになったんだろう?

S席のチケットだったので、1階席の10列目という大変よいポジションでライブを観ることができた。佳穂さんはなんと16ヶ月ぶりのライブということで、演奏を始める前に少し長い挨拶をして、とても長いお辞儀をした。即興で何度も「音楽は……」と歌っていた。「わからない」、そして「楽しい」と続けていた。

バンドセットでの演奏、グランドピアノでの弾き語り、そしてまたバンド、コーラスを迎えて。アンコールでは君島大空がギターで登場した。

佳穂さんのライブを観るのは初めてだった。肉声がデカそうだなと思っていたのだがやっぱりデカい。私と変わらないのではというくらい小柄だが、その身体からものすごいパワーが発散されて広いホールの後ろ、いや世界中のすみまで届いてしまいそうだった。といっても全てを薙ぎ倒すような暴力的なものではなく、包み込むような懐の広いパワーだ。本当にライブを観られてよかった。「アイアム主人公」は2曲目くらいだったのだがもう涙が出てしまった。勇敢な決断をしないのもきっと勇気。

佳穂さん、細田守監督の最新作で主人公の声と歌を担当するらしい。細田守作品は女性や家族の描写があまり好きではないので敬遠していたが、佳穂さんの声なら映画館で観てみたいと思う。

緊急事態宣言下ということでこちらのバンドのスタジオはおやすみしていたので久しぶりにKちゃんと会って話した。Kちゃんはあまり饒舌ではないので、一緒にいると私がよく話すことになる。一方的になっていないかと気遅れする部分もあるが、話を聞いてくれる人のありがたみも感じる。と言っても他愛もない話しかしないのだが、それにも救われる。

もう少しライブの余韻に浸っていたかったが店も閉まっておりまっすぐ帰った。思えば、高円寺に住んでいた頃は帰りたくない気分のときは深夜までやっているファミレスか、シーシャ屋さんへ入った。今の家はシーシャ屋が徒歩圏内にないので、あの甘い香りが恋しい。シーシャ屋に行きたい。