前回の続き。
今回は病院に行った話。
初診は、結構若く見える男性の先生だった。
幼少期からの苦手なこと、できないこと、やってしまうことを思い出しながら話した。
忘れ物や落し物が多いこと、整理整頓が苦手なこと、ボーッとすることや友達と夢中で話し込んでしまうことが多い。空想癖があり集中できないことがある。計画を立てることや、物事に継続してコツコツ取り組むのが苦手。
具体的なエピソードもいくつか話したが、後から後から思い出して「あー、あれを言えばよかったな」「あんなこともあったな」とちょっと後悔した。
人前で話すときには(表情を変えないために)なんとなく考えないようにしていて、思い出せなかったのかもしれない。
そして今どういうことで困っているのかたずねられたのでこちらも話した。ほぼ毎朝忘れ物を取りに一旦家に帰る。仕事でミスが多い、例えばファイルを消してしまうような不注意によるミス。スケジュール管理ができず仕事をためてしまう。こちらも、まあこれくらいしか伝えられなかった気がする。
お医者さんは、今すぐ治療が必要というわけではなさそうだが(多分ふつうに受け答えができているからかな)、最近は安全な薬もあるので薬物治療は良い方法だと思います、と仰った。これで1回目の診察は終わり。
そのあと、ADHDの検査シートを渡されて、該当するものにチェックを入れていった。おそらく注意欠陥と多動でブロックが分かれていたのだが、注意欠陥のほうには面白いくらいにチェックが付いた。多動のブロックにはそれほどつかなかった。
あと、バウムテストといって木の絵を描かされた。
そのあと投薬に備えて採血をしてもらった。
初診の方に渡しているものです、お読みくださいと渡された紙には、鬱や不安を改善するためのアドバイスが書かれていた。
規則正しい生活や適度な運動のほか、「話すことが大切」「ネガティブになってもいいと考える」ことが書いてあった。
私は現在ルームシェアをしているのだが、同居人と顔を合わせると同居人は仕事のことや今日あった出来事をとてもよく話す。
彼女はハードな仕事をしているが、こうやって話すことで気持ちやストレスが整理できているのかもしれないと思った。
一方私は家に帰ると部屋に閉じこもりがちで、同居人の話も正直なところあまり聞きたくはない。一人で音楽を聴いたり本を読んだりSNSを見たりしているほうが好きだ。
恋人がいた時はよく自分の話をしていたと思うが、今はそういった人はいないので特に話す相手もいない、というか、話したい相手がいない。
カウンセリングを受けてみようかとも思ったが、カウンセラーにも話したいとは別に思わないし、その日あったこと程度の話に3000円も払いたくないので、まあいいや、と思ってしまっている。
ネガティブになってもいい、というのは、あえてマイナスなことを考える時間をつくったグループが2ヶ月後、より明るく生活できているという実験結果の話だった。これは知らなかったので、日々のミスで鬱々としてしまうことを無理にやめなくてもいいんだと少し気が楽になった。
翌週、2回目の診療。テストの結果を渡される。
注意欠陥のチェック数がやはり人並みではなく、ADHDの疑いが強いという結果だった。
バウムテストの結果は、「自我を強く持っているが、その理想と自分のギャップにストレスを抱えている」「対人関係にストレスを感じやすい」「無意識的な衝動や精神的なエネルギーが強く、その処理に苦慮している」というような傾向があるとのことで、あながちインチキでも無いのだなと思った。
2回目の診療は女性のお医者さんだった。前回の先生は臨時の方だったらしい。
この診察で、これから処方されるストラテラについて説明を受けた。めまいやふらつき、吐き気、睡眠リズムの崩れが起きやすいとのことで、吐き気止めを一緒に出してもらった。
こうして私は正式にADHDであるという診断を受けたわけだが、わかりきっていたことなのに、少なからずショックを受けていた。
ただでさえ迷惑をかけ続けてきた親を責めるつもりは毛頭ないが、明らかにおかしかった小学校の6年間でなぜ病院に連れて行かなかったのだろう、と思わずにはいられなかった。
成績に問題がなかったから?
授業を妨害するようなことはなかったから?
現在よりもADHDの知名度が低かったとはいえ、母親は看護師だ。少しは聞いたことがあったんじゃないのか。
小学生のときに治療を始めていたらどんな人生になっていたのか。
今更どうしようもないが、やっぱりそういう事を考えてしまってまた自己嫌悪に陥った。
とはいえ、治療の方向で話が進んだのは嬉しい進展だった。
それに、私の話を聞いて「甘え」「そういう性格なだけ」といったことを言われるんじゃないかと、無いと思いつつも心のどこかで恐れていたので、話を聞いてくれて、治療を勧めてもらえたことに少しホッとしていた。
以前交際していた人に「私はADHDかもしれない」と言ったところ「自分でそうわかるなら違うんじゃない(笑)」と否定されてしまい非常に傷ついた経験がある。
また別の友人に話したときは、「えっ、それ俺もそうだよ」「こういう性格なんだと思ってた」という感じだった。
治さなくてもいいじゃんというような彼の姿勢に思わず、私みたいにガチで怒られ続けてたら薬飲んででも治したいと思うんだよ、と吐き捨ててしまった。
その人のADHD傾向には私も気づいていた。だけど彼はあまり怒られずにこれまで過ごしてきたのだそうだ。困っている実感がなければ治療も必要ないので、そう考えるのも無理はないので傷つくことはなかったが、少し羨ましいなあ、と思った。
さて、詳しくない方も読んでいるかもしれないのでADHDの薬の仕組みについて簡単に説明する。
ドーパミンは運動、学習、意欲、快感などを司る神経伝達物質である。
そしてトランスポーターという、ドーパミンをしまっちゃうおじさんがいる。
ADHDの人はドーパミンがどんどんしまわれちゃうので、ドーパミンが足りなくて集中できなかったり、衝動的な行動をしてしまう。
このしまっちゃうおじさんの働きを邪魔する薬がADHDの治療に使われるお薬らしい。
処方されたストラテラはドーパミンではなくノルアドレナリンのしまっちゃうおじさんの働きを妨げるもの、ただ同時にドーパミンもしまっちゃうので同じ効果になるそうだ。
依存性がなく比較的安全な薬だが、効き目がゆるやかで効果が出るまでに時間がかかると聞いた。その期間なんと約2ヶ月。
完全に薬にすがるような気持ちは消え、自分でも出来る限り改善する努力をし、治療を続けるかどうかは効果が出てから考えるのでも遅くはないと思った。
ここからストラテラの副作用との仁義なき闘いが始まる。これは次の記事で。